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バリアフリー2019  腰痛予防対策から考える労働安全衛生マネジメント

記念講演①日本ノーリフト協会代表の保田淳子先生

演題「腰痛予防対策から考える労働安全衛生マネジメント」

※保田先生の講演は本当に素晴らしかったです。

 ポイントを詳細します。

保田淳子先生 バリアフリー2019

1.ノーリフトのミッションは「変えられないを変えていく」

1)大きな成功体験ではなく、小さな成功体験を積み重ねていくこと

2)腰痛を持っているスタッフに日本では「頑張れ」と無理をさせています。

軽微な腰痛の場合、共感することで、痛みは軽減することさえ忘れてしまっていた日本の現場…

2.厚労省の腰痛予防指針は「原則として人力で行わせてはいけない」ことを決めています。

1)日本の腰痛予防は対症療法であり、根本的な「対策」にはなっていません。感染予防に置き換えて考えれば「感染予防」を行っているのに「感染するのは仕方がないね」とは決してなりません。腰痛になる一番の原因を知ることで「対策」が可能になります。

2)ベッドから車イスへの移乗。「抱え上げ」たときの荷重が腰痛の根本原因です。

3)そして、不良姿勢です。不良姿勢は「中腰」だけではありません。体幹から腕が離れた瞬間から不良姿勢が始まっています。

4)日本で行っているボディメカニクスや筋力トレーニングは対処療法でしかありません。

3.ノーリフトは2~3週間で「緊張」が軽減され拘縮も改善する人がいます。

1)患者さんのカルテを確認してほしいと思います。脳梗塞による「右片麻痺」だけのはずなのに「全身拘縮」の方がいるはずです。それは何故でしょうか?

2)患者さんの首をひっかけて、起き上げをするとどうなるのか?

3)患者の身体が歪んでいるのではなく、力任せのケアによって体の歪みが発生しています。

豪州ではこうした患者の治療費に「保険を使ってはダメ。事故なんだから」と指摘されます。

4)力任せのケアで車イスに移乗し、次の目的の食事やトイレが上手くいくのかを考えれば、どのようなケアが必要なのかが見えてきます。

4.ノーリフトケアを通して「プロとしてどのように働けばいいのか」を考え、発見する

1)看護師は専門職として腰痛になって税金を使うようになってはいけません。

①看護師を養成するのに税金がかかっています。

  • 腰痛になれば人手不足になってしまいます。

②プロとして対策を行って予防で腰痛にならないようにしましょう。

(看護・介護の専門職として腰痛を当たり前と許容する日本の文化・風習そのものに疑問を持つこと)

2)介護職の賃金があげられない原因は看護師にある。

(看護師の賃金が安すぎることが原因)

5.皆さんに質問です。「あなたの顧客は誰だと意識していますか?」

1)目の前の患者さんだけではありません。

2)医療費を負担しているのは国民全体です。

スタッフが足りない。時間が無いと感じて働いていると思います。

「点」ばかりを見るのではないことを教えられました。

6.保田先生が豪州から帰国後

日本の患者さんの「身体が歪んでいる状態」を豪州スタッフにメールして問いかけをしました。

豪州スタッフからの返答は・・・

「これはケアの怠慢でしょう」との指摘でした。

保田先生はこれにはさすがに反論(説明)しました。

「日本の看護師はみんな一生懸命に頑張っています」と。

すると・・

豪州スタッフ

10年程前には、こういう患者さんがいたよね・・・

「頑張っている方向性が間違っているんじゃないの?」と。

「頑張る方向性、ケアの方向性を見直すべきなんじゃないの?」と。

7.ノーリフトを通してケアの方向性を見直す。

1)スタッフがいない。時間がない。

その中でも、作業項目の洗い出しを行うべきです。

①リフトを使うことで「時間がかかる」というけれども

目の前の「時間=今」を急ぐことが、どのような結果を招いているのか?

②今を急ぐ、人力の介助により、スタッフが腰痛になり

患者さんの「身体は歪み」「拘縮」「褥瘡」

時間を急ぐことによって発生された、腰痛などの二次障害は

スタッフと患者・利用者さんは「一生背負う」ことになります。

時間軸の使い方を見直さなければいけないことを考えさせられました。

③「道具」を使う私たちが、目的を持って、アセスメントをしながら使いこなせているのかを「ノーリフト」を通して考えることが大切です。

職員が安全でない場所で、患者・利用者さんの安全が守れるのかを考えることが必要です。

8.Q&A会場からの質問

質問:私は介護施設に勤務しているスタッフです。

職場には、腰痛や体調不良のスタッフがたくさんいます。

経営者や管理者にノーリフトの提案をしたいのですが、その手順や方法を教えてほしいです。

質問に対する回答

1)腰痛実態調査が必要です。

多くの管理者は、職場に現在、何%の腰痛者が存在しているのか?

この仕事に就いたために、あるいはこの職場に来たために、どれくらいの腰痛が発生しているのか?データを把握していません。

まず実態を把握するための腰痛調査をすすめます。

2)次に、課題を探すことが必要です。

次に、スタッフに「どのような場面が大変なのか」をヒアリングしていきます。

腰痛調査だけでは、現場は手間がかかっただけですから、課題を探すために実際の現場で、どのような場面が大変なのかをヒアリングしていくことが重要です。

3)スタッフの意識改革

現場の実態調査の次のノーリフト導入プログラムは、1.5時間から3時間程度のセミナーを行います。セミナーでは、スタッフが大変な場面・場所は、利用者さんも強引な持ち上げによって「大変」な思いをしていることを意識し、実感できる実技を行っていきます。

現在の腰痛予防対策は予防にはなっていないこと。対処療法でしかないことに気づいてもらいます。

4)何をどのように解決していくのか?

スタッフと利用者の現場の実態を把握し、対策を立てて、課題を見つけたときに、何を目的に、どのような道具を使うのかを考えます。どのような道具(シートやリフト)を何のために使うのかを考えることは重要です。

5)福祉施設では、腰痛だけではなく、スタッフのケガが増加しています。

管理者が聞く耳を持たない場合は、最後の手段として労働基準監督署に匿名で電話をして行政に指導をしてもらうことも必要です。

デンマークだと管理者に職員の安全を守る義務を明確にしているため、指導を守らない場合、管理者は逮捕される可能性があります。

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