職員の安全無くして、患者・利用者の安全は守れない
第25回 高齢者・障害者の快適な生活を提案する総合福祉展「バリアフリー2019」インテックス大阪 4月19日参加報告
特別講演「デンマークと日本における医療・介護職の腰痛予防対策」
講師:保田淳子氏(日本ノーリフト協会代表)
講師:ヘレ・ボッケスコウ氏(デンマークの作業療法士Brehmas spilerdug社 副社長)
垰田和史先生(日本ノーリフト協会顧問・滋賀医科大学社会医学講座准教授)主催者挨拶
1.日本ノーリフト協会発足からまだ10年経っていませんが、ノーリフトは急速に進歩しています。
その一つは各施設で普及に尽力していただいていること。そして、看護・介護の養成学校の教科書に、私たちが執筆したノーリフトの記述が掲載されるようになってきました。
もう、ノーリフトは常識になりつつあります。
一方で、抱え上げでも「技を極めれば腰痛が防げる」と思っている専門職がまだ存在しています。
そうしたエビテンスは存在しません。
🔴私たちが日本にノーリフト導入を始めたとき、ノーリフトの技術やスライディングシートの使い方を伝えてきました。
今日の講演会にも技術を学ぶことが目的で参加されている方がいると思います。
しかし、今は、スライディングシートや福祉機器リフトの使い方や技術を学ぶだけでは、ノーリフトを実践していることにならないことに、気づき始めていることが大きな特徴です。
2.日本でノーリフトが進み始めている3つの特徴
1)利用者さんのメリット
以前は、擦り傷や皮下出血斑が、どこで、いつ発生したのか分かりませんでした。ノーリフト導入により、擦り傷がなくなり、座位の姿勢も良くなっています。利用者さんから、「ノーリフトでなければ困ります」との声が出始めています。利用者さんの声で現場が動き始めています。
2)スタッフ不足の解消
スタッフ不足の施設では、求人募集を出しても介護スタッフを集めるのは大変です。
ノーリフト推進と同時に求人広告を出すことで、若いスタッフが集まってくるという地域が現れてきました。
3)職員の安全なくして、患者・利用者さんの安全はあり得ません。
①日本でも国の方針として、従業員の安全や腰痛を無くすことは、「事業主の責任」ということが明確に示されました。既に「安全を守らない事業主」は、指導の対象になっています。
利用者だけの安全を考えている事業主はもう時代遅れです。
②職員と患者・利用者さんは、同等に安全を第一に考えなければいけません。
安全第一というときに、利用者さんだけの事を考えるような事業所は、もはや時代遅れです。
ノーリフトを本格導入した施設では、「職員の安全無くして、利用者の安全を守れるはずはありません。」
こういうことを施設管理者が口に出すようになり、患者本人や利用者の家族に、この意味を説得する施設が現れています。
3.日本の数年前の状況では考えられないような変化が現れています。
デンマークではノーリフト技術の先進国です。
技術の普及だけではなく、法律・制度として、文化として取り組まれています。
現在の働く人と患者・利用者の安全をどのように作ってきたのかを本日学ぶ機会を提供できることに感謝しています。