保健衛生業内の労災認定 腰痛が78%と圧倒的
保健衛生業の腰痛労災認定件数は、産業別の比較でトップ
保健衛生業内の労災認定された作業関連疾患は腰痛が78%と圧倒的
厚労省は「職場における腰痛予防対策指針」を策定し、重量物を取り扱う事業場などへの啓発・指導を積極的に行ってきました。トヨタや日産などの大企業がいち早く腰痛対策を行ったため製造業での「腰痛労災認定」は近年減少しています。しかし、保健衛生業は立ち遅れているのが実態です。このため厚労省は2013年6月に腰痛予防対策指針を改定し、医療介護分野を指定し特別な対策を講じる必要性を強調しています。
ノーリフト導入のきっかけは、看護介護スタッフ8人が同時に腰痛に苦しみ、病欠者が相次いだこと
ノーリフトプログラムは、単に機器を導入するためのプログラムではありません。人力による看護や介護によって発生する二次被害「スタッフの腰痛」「患者の寝たきり」を防ぐことができます。
ノーリフト徳島実行委員会は5月19日に学習会を開催。高松協同病院に勤務する理学療法士の井下庸祐さん・香川民医労執行委員長を講師に招きました。井下委員長は、同病院の「腰痛対策チーム」の事務局長として、ノーリフト導入の中心的な役割を果たしています。高松協同病院は3~4年前に、若い看護介護スタッフ8人が同時に腰痛に苦しみ、病欠者が相次ぎました。そのタイミングで、日本ノーリフト協会の保田代表の講演を受講し、井下委員長がノーリフトを体験したことがノーリフト導入のきっかけでした。ノーリフトは、労働安全衛生活動を強化できる重要なツールでもあります。
「ノーリフト」は、看護や介護の現場で「腰痛は仕方がない=習慣」と、あきらめている文化を変えるために考案されました。腰痛をなくし安全性を高めるために物理的な機器を使って、専門的な知識と技術を駆使したケアを追求します。
「ノーリフト」の重要な理念は、コミュニケーションをとりながら相手の動きを引き出すことにあります。
機械を使って人を運ぶのは、非人間的と思いがちです。また「時間がかかる」など、否定的な意見が出てきます。そこにとどまるのではなく、腰痛によって現場を去っていく看護介護の労働環境から腰痛ゼロをなくし、看護や介護の質の向上を追及していくツールが「ノーリフトプログラム」です。
リフトを上手く活用することで「患者さんと話す時間がとれるようになった」と歓迎されています。現場スタッフと患者さん利用者さんに喜ばれ、看護師や介護職の離職が止まり看護や介護の質が向上し、寝たきり患者が少なくなり健康年齢がアップした結果、医療や介護への政府の財政支出が改善傾向にあると好意的に豪州政府は高評価しています。
1998年からノーリフトを取り入れてきた豪州の病院や介護施設では、リフトを使わない看護師や介護士は「知識のない人」とみなされるまでになっています。高知県は「ノーリフト宣言」を行い、県として導入推進を図っています。高知県内のノーリフト推進のモデル施設や病院では既にノーリフトが定着し、以前のような人力での移乗には戻れないと現場スタッフがアンケートに回答しています。
高知県では「スタッフの身体疲労が軽減した」。マネジメント・管理者は「腰痛の訴えが減少し離職率が低下した」。介護を受けた利用者さんは「拘縮(こうしゅく)が軽減し自立度が上がった」など、喜ばれている事例がたくさん報告されています。