若い看護介護スタッフ8人が同時期に腰痛で苦しみ、病欠者が相次ぐ現場を改革する。
ノーリフト®徳島実行委員会は8月5日(土)に日本ノーリフト協会の保田淳子代表理事を招いて公開講座を行います。
そのプレ学習会第1弾を5月19日に開催。講師には、高松協同病院に勤務する理学療法士の井下庸祐さん・香川民医労執行委員長を招きました。井下委員長は、同病院の「腰痛対策チーム」の事務局長として、ノーリフト®導入の中心的な役割を果たしています。
高松協同病院は3~4年前に、若い看護介護スタッフ8人が同時に腰痛に苦しみ、病欠者が相次ぎました。そのタイミングで、日本ノーリフト協会の保田代表を講師に招き「腰痛予防対策ノーリフト®講演会」を日本医労連四国地方協議会が香川県内で開催しました。井下委員長がこの学習会に参加し、ノーリフト®を体験したことがノーリフト®導入のきっかけです。
井下委員長は、「ノーリフト®ケア導入への反対意見は多い。でも、腰痛で苦しむスタッフを無くす病院方針として、院長と事務長が全面に立って導入を進め、職員学習会を繰り返し、反対意見もしっかり聞きながら現場での成功例を重ねて実績を広げてきました。」と導入するにあたってのポイントを話しました。
高松協同病院では、入院患者さんにリフト機器での移乗の合意をとっています。リフト機器移乗に合意できない方の入院は断っています。
ノーリフト®プログラムは、単に機器を導入するためのプログラムではありません。
看護や介護の現場で「腰痛は仕方がない=習慣」と、あきらめている文化を変えるために考案されました。腰痛をなくし安全性を高めるために物理的な機器を使って、専門的な知識と技術を駆使したケアを追求します。
介護士や看護師は「身体疲労が軽減。利用者さんと話す時間ができた」。マネジメント・管理者は「腰痛の訴えが減少し離職率が低下した」。介護を受けた利用者さんは「拘縮(こうしゅく)が軽減し自立度が上がった」などなど、とても喜ばれている事例がたくさん報告されています。
腰痛予防対策としてのノーリフト®の重要な理念は
「声で人を動かすこと」
「コミュニケーションをとりながら相手の動きを引き出すこと」
機械を使って人を運ぶのは、非人間的と思いがちです。更に「時間がかかる」「手間がかかる」など、否定的な意見が出てきます。
そこにとどまるのではなく、腰痛が多発し、泣く泣く現場を去っていく看護介護スタッフの働く環境から腰痛ゼロの労働環境をどのように実現するのかを追及していく、そのために、個人・組織・社会を変えていくツールが「ノーリフト®プログラム」です。リフトを上手く活用することで「患者さんと話す時間がとれるようになった」と歓迎されています。
現場スタッフと患者さん利用者さんに喜ばれ、看護師や介護職の離職が止まり看護や介護の質が向上し、重度の介護状態から脱し、健康年齢がアップしていくその結果、医療や介護への政府の財政支出が改善傾向にあると好意的に豪州政府は高評価しています。1998年からノーリフト®を取り入れてきた豪州の病院や介護施設では、リフトを使わない看護師や介護士は「知識のない人」とみなされるまでになっているといいます。
今回が初めてのノーリフト®学習会 介護福祉士さんの感想を紹介します。
学習会に参加して実際に「スカイリフト」という機械を体験させてもらいました。介助する側とされる側の両方を体験しました。感じたことは、介助する側の身体(主に腰)の負担がほぼゼロになるところです。また、介助される側としては、人に介助してもらうよりも安心感が大きかったことです。人が介助する場合は個人の差が大きく出ます(男女差・体格差・介護技術の差)。しかし、この機械なら常に一定の動きなのでその不安が解消されます。また人に介助してもらうという精神的な負担が軽減するように感じました。一方で、時間がかかってしまうこと。忙しい職場では急ぐことで起こる事故は心配です。機械で動かされるという抵抗感を抱いてしまう(物扱いされていると感じる)患者も一定数いるかなと思います。私は両方を比較するとメリットの方が多いと感じました。8月5日のノーリフト®学習会にはできるだけ多くの人に参加して体験してもらい、その上で色々な議論ができればと思います。
介護福祉士・新居謙さん