徳島県医労連の新型コロナ感染対策
医療介護従事者への差別的言動の聞き取り調査報告
コロナ禍の下で病院職員とその家族が「保育園や学童保育での預かり拒否」「同居家族の勤務先から自宅待機命令」「看護師のビジネスホテル宿泊拒否」
そして、嫌がらせの言動が浴びせられていることが全国的な問題となる中、徳島でも同様の差別的言動が報告されています。
新型コロナは、2020-21年の秋冬シーズンでは、インフルエンザと同時発生し、新たな猛威を振るうことが予測されています。
自らの命をかけて感染症とたたかっている医療従事者とその家族が、「感染症拡大」に伴って、業務を離れた私生活で差別を受けるようなことがあってはなりません。
医療従事者の苦悩や実害を可視化し、差別が発生する原因解明と根源を除去しなければ差別はなくなりません。徳島県医労連は、この問題について、県内の新型コロナ感染患者受け入れてきた公立公的医療機関、発熱外来実施医療機関、民間医療機関など20施設に勤務する医療従事者とその家族を対象に「聞き取り実態調査」を実施しました。
医療従事者に対する差別言動の原因と対策①
検査体制の拡充で陽性者の判別「隔離と人権擁護」
誰が感染しているのか、分からない社会環境が改善されないままでは、不安は増幅し、疑心暗鬼となった市民による差別的言動は絶対に無くなりません。これは「差別」とは言い切れず、自分や家族を守るための「自己防衛」の側面を持っているからです。
この状況を解決するには、徹底した検査拡充で陽性者を判別し隔離することが最も有効です。
PCR検査は、医療機関や医師が必要と判断した場合はもちろんのこと、医療・介護・教育・保育・公務員やサービス業なども含めて、社会活動を維持するためには、人との接触を避けられない方々が検査を希望した場合など、速やかに検査が行われるべきです。
そして、患者の人権を守る啓もう活動を同時に進めることで市民の不安は軽減できるはずです。ワクチンや治療法が確立されるまでの間、国民不安を取り除く責任は政府と自治体にあります。
差別の原因と対策②
県知事の病院名公表が医療従事者差別の原因
差別は、行政や報道機関によって公表される病院名や患者情報(居住地や年齢、感染ルート)などが、センセーショナルな記事とともにSNSで拡散され、一般市民が冷静な思考を失い発生しています。
発熱外来を積極的に行っている医療機関で感染者が発生するのは当然のことであり、病院名や患者情報を公表する必要性はありません。
県医労連の聞き取り調査では、県知事発表とマスコミ報道の直後から健生病院職員と家族・患者への差別が集中していることが分かっています。一方で、健生病院以外の陽性患者を受け入れている医療機関の職員への差別的言動は、今回の聞き取り調査で全くありませんでした。
徳島県内での医療従事者への差別の引き金が、県知事発表とマスコミ報道にあることは否定できない事実となっています。この事実を認識し、情報公開と報道の在り方にルールが必要です。繰り返しますが、発熱外来や入院受入れを積極的に行った結果、陽性患者が出たときに病院名が公表されるなら、民間医療機関は、発熱外来を行わなくなりますし、発熱患者の行き場がなくなります。実際に、5月の徳島県社会保障推進協議会では、高齢の発熱患者が「かかりつけ医」に受診を断られ、たらい回しとなり、やっと入院できた病院で死亡する悲劇が報告されています。
県知事や医師会会長が「医療従事者への差別をやめてください」と共同声明を発信し、多くの自治体関係者、著名人や人気スポーツ選手も「医療従事者へ感謝」を表明していますがこれでは根本的な解決にはなりません。それは病院に勤務時だけであり、医療従事者が私生活に戻れば、「自己防衛の差別」や偏見の目にさらされているのが現実です。その結果、救えるはずの尊い命が失われる悲劇を絶対に繰り返してはいけません。
日本医労連の全国調査では、現役の看護師から「今回のコロナ禍が落ち着けば看護師を辞めたい」とのアンケート回答が寄せられています。医療崩壊の多くは、マンパワー不足が原因で発生しており、医師・看護師等の医療従事者の大幅な増員が急がれている今、現在、働いている医療従事者が働き続けられる労働環境と生活環境を整えることは不可欠です。その上で、潜在看護師が職場復帰するための「復帰プログラム」の充実、そして、政府の医師・看護師養成数の削減方針を直ちに転換することが必要です。
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